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「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」

『幼保連携型認定こども園 教育・保育要領』

 「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」

主に【自然との関わり・生命尊重】より

 

こどもの森の草むらを囲むように

みんなが覗きこんでいます。

「ねぇ、ダンゴ虫の卵じゃないかな?」

という声が聞こえてくるので私も覗きます。

草むらの茂みをかき分けると、

豆つぶほどの卵?が何個もあります。

「違うよ!トカゲの卵だよ、トカゲのお母さんの卵だよ」

Kくんの言葉に“えっ!?トカゲ??”と

私もそばにいた友達も驚きましたが、

Kくんが見つめる先をよく見てみると

卵の近くにトカゲがいたのです。

すると今度はトカゲの存在に大盛り上がり!
観察を楽しみ始めます。

 

「ねぇ、このトカゲさぁ、生きているのかな?」

「さっきから動かないね?!」

と友達が言います。

Kくんは

「生きてるよ!さっき目をパチパチさせていたよ。

寒いから眠っていたんだよ」

と思いを伝えます。

私はそっと会話を聞いています。

「ねえ、トカゲを入れて!」

友達が観察ケースを持ってきました。

「かわいそうだよ!卵のお母さんなんだよ。

トカゲのお母さんがいなくなると心配するよ」

とKくんが伝えます。

そばにいた友達はKくんの言葉に心が動きます。

「そうだね~、トカゲのお母さんの卵だもんね。

もうすぐトカゲの赤ちゃんが生まれるよね!」

私はあったかい気持ちになりました。

「いつ赤ちゃんが生まれるのかなぁ?」

「あと、20くらいだよ」

いち、にい、さあん…と数えながら生まれてくるのを楽しみにするKくんでした。

 

 

子どもは、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議や尊さに気づき、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり大切にする気持ちを持つようになります。

これからも、子ども達の自然や動植物に対し、愛情いっぱいの気持ちを大切にしながら見守っていきたいと思います。

 

※この文章は、Kくんのトカゲのお母さんの気持ち、トカゲの赤ちゃんの気持ちを思う心の部分もふまえ、「生まれる」を使用しています。

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『幼保連携型認定こども園 教育・保育要領』

  主に【感性と表現に関する領域 表現】より

 

「わぁ!アリさんいっぱい!」

 HちゃんとKくんが地面にいるたくさんのアリさんに大興奮!

 MちゃんとAちゃんもやってきて、キラキラした瞳で真剣にアリさんを見つめる4人は、あっという間にアリさんの世界に飛び込んでいきました。

 

 私は(みんな何を感じているのかな?)と思い、一緒にアリさんの世界を楽しむことにしました。

 

 「アリさん、なにしてるのかな?」

 とHちゃん。

 

 「かくれんぼしているんじゃない?」

 とMちゃん。

 

  その時Hちゃんはひらめいた表情になり、

「そしたら、かくれる場所がないね!」

  と、砂場まで走っていきました。

 

 私は何が始まるのかワクワクしていると、Hちゃんは砂をたくさん入れたカップを持って戻ってきました。

 

 そして次の瞬間、カップの砂をアリさんにドバっとかけたのです。

 アリさんはビックリした様子で一生懸命砂山から出ていこうとします。

 

 「アリさん、やったぁって言ってる!」

とそれは嬉しそうな表情のHちゃん。

 

 私は最初(アリさん、かわいそうだなぁ)とも思いましたが、それ以上にHちゃんがアリさんのかくれんぼの世界に心寄せ、アリさんのために…。と考えてくれた今の姿に感動してしまいました。

「アリさん、ありがとうって言ってるみたいだね♪」

と私は伝えました。

 

 入園当初は、寂しさや不安から涙することが多く、お友達の様子を遠くから見て楽しんでいる姿が多かったHちゃん。

   今はお友達と一緒にアリさんの世界を楽しみ、自分が感じたことをまっすぐ素直に表現してくれた姿に私は彼女の心の成長を感じました。

  そして何より、Hちゃんとアリさんの世界を一緒に共有できたことが大きな幸せでした。

 

   子ども達の豊かな感性は、園児が身近な環境と十分に関わり、そこで心を揺さぶられ、何かを感じ、考えさせれらるようなものに出会って、感動を得て、その感動を友達や保育教諭等と共有し、感じたことを様々に表現することによって一層磨かれていきます。

 

「今、砂の中にかくれたよ」

と私が言うと、

 

「アリさんみぃつけた!」

と笑顔のHちゃんでした。

   

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 主に 人との関わりに関する領域「人間関係」

     身近な環境との関りに関する領域「環境」から

 自分達で作ったダンゴムシのダンちゃんが大好きな1才児さん達は、お部屋の中でも〈こどもの森(園庭)〉でも、お友達の様にいつも一緒です。

 

 特にRくんのダンちゃんへの愛情はひとしおでした。

 一緒に遊んでくれることはもちろん、毎朝登園するとまずは真っ先にダンちゃんを探したり、見つからないと涙することも…。

 ダンちゃんへのより深い関り方や優しいまなざしを見ていると、今のRくんにとってダンちゃんは‟お友達”というより‟家族”のような存在なんだろうな、と感じていました。

 

 

 ある日のこと。

 1才児さん達が音楽に合わせて体を揺らしたりジャンプをしたりと、思いっきり全身で楽しんでいた時、私はRくんが何か握りしめた小さな手に、ふと目が留まりました。

 よく見ると、手の中には彼がお気に入りの、細長くて白いダンちゃんがいます。

 私は、Rくんは日常の色々な場面でダンちゃんと一緒に‟楽しい”を感じているんだなぁ、と微笑ましく思いました。

 すると、Rくんは近くにあった段ボールの太鼓を引き寄せます。

 そして太鼓の上にダンちゃんをそっと、乗せました。

 

 Rくんはトントン、と太鼓を叩き始めます。

 叩くリズムに合わせてダンちゃんも弾みます。

 弾むダンちゃんの様子を見つめるRくん。

 「わぁ!ダンちゃんも一緒にダンスをしているね。

     ダンちゃんも楽しそう!」

 と私は思わず言葉をかけました。

 すると、Rくんは私に笑顔を見せ、またやさしく太鼓を叩き始めます。

 ダンちゃんと一緒にダンスを楽しむように。

 でも、太鼓から落ちてしまわないように…。

 ダンちゃんを思い、包み込むようなRくんの優しい手…。

 

 Rくんはまるで、ダンちゃんというわが子を愛おしく思う小さなお父さんのようでした。

 この時、私は心がとても温かくなるのと同時に、Rくんのお父さんの愛情にも触れることができたような気がしました。

 

 子ども達は身近な人との愛着をよりどころにして、少しずつ自分の世界を拡大していきます。そして保育教諭等がその過程に寄り添い、一緒に感じていくことで子どもの世界は豊かさを増していきます。

 これからもRくんにとって身近な世界がより魅力に満ちたものとなっていくよう、Rくんが心を動かす瞬間を一緒に感じていきたいと思います。

   

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『幼保連携型認定こども園 教育・保育要領』

  主に 感性と表現に関する領域「表現」 から

 

   『杏の木』だと信じていた木の所で

 「梅のシロップ作りをするんだよ」

 と5才児さんが収穫する姿を見て、『杏の木』じゃなかったんだということを知り、またずっと観察していた大きく育った実が、どんどん収穫されていく様子に残念そうな3才児さん達。

 しばらくすると、みんなそれぞれこどもの森(園庭)で遊び始めました。

 そんな中、Kちゃんはずっとその場を離れず5才児さんの様子をじっと眺めていました。

 

 「杏の木じゃなかったのかな…?」

 とつぶやくと

 「あんずなのにね!」

 とKちゃん。

 

 その時の真剣な表情に、私は

 〈いずれ杏の木と梅の木の違いは分かってくるはず…。〉

 〈今Kちゃんが梅の木を杏の木として見つめ、対話している姿や木への思いに寄り添いたいな〉

 と思い、一緒に木を眺めていました。

 

 その日の夕方、Kちゃんはこどもの森へ行くと、真っ先に杏の木(梅の木)の所へ行き、

 「まだ(実が)あるよ!」

 と、ほっとした表情で私に教えてくれました。

 

 対話的であるということの対象は、人に限りません。

 様々な環境に主体的に関わりそして対話する。

 このエピソードには、Kちゃんの主体的に対話する姿があると思いました。

 『杏の木』だと思っていたのに、「梅の木だよ」と5才児さんが楽しみに観察してきた実を次々と収穫する姿に悔しくて悲しくなったのかもしれないし、これは『杏の木』なんだと信じる思いと同時に不安を抱いていたのかもしれません。

 

 何事にも真剣に向き合うKちゃんの感性は、やがて自分で感じたり考えたりしながら、より表現する力へとつながっていくと思います。

 

 今は彼女自身で思いを巡らせてみたり、知っていることから連想したりして試行錯誤を繰り返している育ちを大切にしたい、そしてこれからもKちゃんのありのままの姿を見守り共感し、また時には問いかけることで気付きを促し、表現の世界を広げていきたいと思います。

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『幼保連携型認定こども園 教育・保育要領』

『幼保連携型認定こども園 教育・保育要領』

  主に 感性と表現に関する領域「表現」 から

 

 初夏の風が吹く5月になり、こどもの森(園庭)はいろんな草花や虫でいっぱいになりました。

 はと組(2才児)さんは虫がブームになり、子ども達はだんご虫の帽子をかぶり、それぞれに虫かごを持って保育者といっしょに虫を探していました。

 そんな中、虫が大好きなIくんは虫を見つけても、まだ触れることが苦手な様子でした。

 お友達や保育者が見つけた虫を興味深そうにいつも眺めていまいた。

 ある日、私がお友達と虫探しをしていると、お部屋から虫かごを持ってきたIくん。

「Iくん、虫さんつかまえたの!?」

 とたずねました。

 すると、少し微笑んだ表情で虫かごのふたを開け、中を私に見せてくれました。

 そして、近くにあった落ち葉や花を虫かごに入れ始めたのです。

「虫さんにご飯入れてあげてるの?虫さん嬉しそうね」

 と気持ちを伝えると、虫かごの中を満足そうに眺めるIくんでした。

 

 実はIくんが興味深く眺めたり、えさをあげたり、お世話をしてくれていた、そして私に見せてくれた大切な ″虫“というのは、″トイレットペーパーの芯を虫に見立てたもの”だったのです。

 私はIくんの、こころの中にある″虫のイメージの世界“に少しだけ触れることができたような気がして、とても幸せな時間でした。

 子どもは環境と関り、様々な感覚を味わう際に、保育教諭等もその感覚を一緒に楽しんだり、感覚とイメージを結ぶ言葉を添えたりすることで、子どものイメージはさらに膨らみ、感性も豊かになっていきます。

 これからも私自身が感性を豊かに持ち、共感をもってIくんの気づきや思いを受け止めていくことを大切にしたいと思います。

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『幼保連携型認定こども園 教育・保育要領』

主に 育ってほしい姿「健康な心と体」

         五領域「人間関係」より

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​いつものように、園庭に遊びに行ったある日の

こと…。

園庭にいくなり、5才児の男の子が向かった先

は、1才児のMくんのもとでした。二人で足元を

見てなんだかとても楽しそうな様子…。

私もカメラを構え近くに行きましたが、あまり

近づいてしまうと私の存在に気づき、やめて

しまうと思い、少し離れたところからそっと

見守ることにしました。

最初は1才児のMくんの様子を上から静かに覗き

込んでいましたが、だんだんとMくんの目線に

合わせ、優しい眼差しで見守ったり、話しかけ

てくれていました。

その姿を見て、私もほっこりとした気持ちに

なりました。

入園したころは、新しい環境への不安な思いと

頑張らなければという思いで沢山葛藤していた

5才児のSくん。

しかし、少しずつ友達に目が向くようになり、

友達という存在の大切さを知り、楽しさは

もちろん悔しさや悲しさという経験を積み

重ねる中で充実感や満足感を味わえるように

なりました。

この経験の積み重ねが今では幼い友達にも心を

通わせ喜び合うSくんの​心の成長につながって

いると思います。

人と関わる力を育む上では、自分のやりたい

事に取り組むことを基盤とし、友達と様々な

感情の交流をし、より生き生きとした深みの

ある人間関係を広げていく事が大切です。

これからもSくんが安心感の中で自己を発揮し、

さらに人間関係を深めていけるよう、Sくんの

目には見えない心の声を聴き、​共感していき

たいと思います。

※この文章・写真は、保護者様のご了解を得て

掲載しております。​

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